村上春樹風アーセナル①


 

 f:id:kokin_chan:20150115161839j:plain

 

才能
「ねえベンゲルさん、どうしてガナーズは毎シーズン安定した力を見せるのかしら」
「それなりの努力を払っているからだよ」とアーセン・ベンゲルは言った。
「努力なしにものごとが達成されることはない」
「たとえばどんな努力?」
「たとえば彼だよ」とベンゲルは言って、真剣な顔つきでストレッチをしている髪の短い
ドイツ人ミッドフィルダーを示した。

「僕は彼にとても高い移籍金を支払った。みんながちょっとびっくりするくらいの額だよ。
そのことは他のチームメートも知っているけれどね。どうして彼にそんな高い移籍金を
払ったかというと、彼にはいいパスを出す才能があるからだよ。世間の人にはよく
わかっていないみたいだけれど、才能なしにはいいパスをだすことはできないんだ。

もちろん誰でも努力すれば、けっこういいところまではいく。10本に1本はゴールを予感
させるパスを出すことができるようになる。たいていのチームにいるミッドフィルダー
はその程度のものだ。それでももちろん通用する。でもその先にいくには特別な才能が
必要なんだ。それはピアノを弾いたり、絵を描いたり、百メートルを走ったりするのと同じことなんだ。僕自身もかなりうまくパスをだせると思う。ずいぶん研究もしたし練習もした。でもどう転んでも
彼にはかなわない。同じパスコースに、同じように同じ強さでボールを転がしても、供給されるものの質が違うんだ。どうしてかはわからない。
それは才能というしかないものなんだよ芸術と同じなんだよ。そこには一本の線があって、それを越えることのできる人間と、越えることのできない人間とがいる。だから一度才能のある人間を
みつけたら、大事にして離さないようにする。高い給料を払う」

そのプレーヤーは一部の評論家からひどく嫌われていて、おかげで少しでも活躍できない試合があるとひどい記事を書かれることがあった。でも彼らはかつてマドリードで輝いていた彼をそれだけ愛していたのだろうし、ベンゲルはとくに気にもしなかった。
アーセン・ベンゲルはそのミッドフィルダーメスト・エジルを気に入っていたし、
彼もベンゲルを信頼して、よく働いてくれた。

 

条件
「条件はどのクラブも同じなんだ。故障した飛行機に乗り合わせたみたいにさ。もちろん金持ちのクラブもいりゃ貧乏なクラブもいる。古いクラブもいりゃ新しいのもいる、大きいクラブもいりゃ小さいのもいる。だけどね、人並み外れた強さを持ったクラブなんてどこにもないんだ。みんな同じさ。

何かを持ってるクラブはいつか失くすんじゃないかとビクついてるし、何も持ってないクラブは永遠に何ももてないんじゃないんじゃないかと心配してる。みんな同じさ。

だから早くそれに気づいた監督や経営陣がほんの少しでも強くなろうって努力するべきなんだ。振りをするだけでもいい。そうだろ? 強いクラブなんてどこにも居やしない。強い振りのできるクラブがあるだけさ。」

 

移籍
メルテザッカーは何度か肯いた。
ポドルスキ「決めかねている」 
「そんな気がしてたよ」 メルテザッカーはそう言うと、しゃべり疲れたように微笑んだ。 
ポドルスキはゆっくり立ち上がり、iPhoneと帽子をポケットにつっこんだ。時計は既に一時をまわっていた。 
  「おやすみ」とポドルスキは言った。 
  「おやすみ」とメルテザッカーが言った。
「ねえ、ボスが言ったよ。ゆっくり歩け、そしてたっぷり水を飲めってね」 
   ポドルスキメルテザッカーに向かって微笑み、ドアを開け、階段を上る。
街灯が人影のない通りを明るく照らし出している。ポドルスキはガードレールに腰を下ろし、空を見上げる。
そして、いったいどれだけの水を飲めば足りるのか、と思う。 

 

 

 

監督
「最近のストライカーはみんな礼儀正しくなったんだ。僕が学生の頃はこんなじゃなかった。ストライカーといえば、みんな守備の時はたってるだけで、半分くらいが性格破綻者だった。でもときどきひっくり返るくらい凄いゴールがみれた。
僕はいつもストラスブールのスタッド・ドゥ・ラ・メノに通ってサッカーを見ていた。 
そのひっくりかえるような経験を求めてだよ」 
「そういう人たちが好きなのね、ベンゲルさんは」 
「たぶんね」 
と僕は言った。 
「まずまずの素晴らしいプレーを求めてサッカーにのめり込む人間はいない。 
九の外れがあっても一の至高体験を求めて人間はスタジアムに向かって行くんだ。 
そしてそれがサッカー界を動かしていくんだ。それがスポーツというものじゃないかと僕は思う」 
僕は膝の上にある自分の両手をまたじっと眺めた。それから顔を上げてその女性記者の方をを見た。 
彼女は僕の話の続きを待っていた。 

「でも今は違う。今では僕は経営者だからね。僕がやっているのは資本を投下して回収することだよ。僕は芸術家でもないし、何かを作り出しているわけでもない。そして僕はここでべつに芸術を支援しているわけではないんだ。好むと好まざるとに関わらず、この場所ではそういうものは求められてはいないんだ。経営する方にとっては礼儀正しくてこぎれいな選手の方がずっと扱いやすい。それもそれでまた仕方ないだろう。世界中がニコラ・アネルカで満ちていなくてはならないというわけじゃないんだ。」

「熟練した才能 トマシュ・ロシツキー」14-13 vsQPR

Arsenal 2- 1 Queens Park Rangers

 

 

f:id:kokin_chan:20141231013202j:plain

Arsenal

  • 01 Szczesny
  • 02 Debuchy
  • 04 Mertesacker
  • 18 Monreal
  • 03 Gibbs
  • 07 Rosicky (Chambers - 83' )
  • 20 Flamini
  • 19 Cazorla
  • 17 Sánchez
  • 12 Giroud Dismissed
  • 23 Welbeck (Coquelin - 88' Booked )

Queens Park Rangers

  • 01 Green
  • 15 Onuoha
  • 05 Ferdinand Booked
  • 04 Caulker
  • 14 Isla
  • 17 Mutch Booked (Zamora - 71' )
  • 20 Henry (Fer - 62' )
  • 19 Kranjcar Booked
  • 03 Traore (Hoilett - 62' Booked )
  • 24 Vargas
  • 09 Austin
 
"Invincible"が去った後のアーセナルフットボールを作り上げ、体現し続けたプレイヤーこそがトマシュ•ロシツキーである。
前半をケガで棒に振った今シーズンだが、QPRとの復帰戦、34歳になってもそのプレースタイルは唯一無二だった。
「鋭いスプリントができづらくなった。」と自身が語るように、身体に以前のようなキレが戻ることはなかったが、それでもフルスタックなMFを欠いているチームで十分すぎる働きをした。
ミッドフィールドでボールを受けると恐ることなく前を向き相手組織を崩しにかかる。計算されたドリブルは味方のチャンスメイクのための布石である。驚くべきはドリブルの質だ。普通、ひとりでの突破力があると言われる選手というのは一度ドリブルを始めると視野が極端に狭くなりプレイの選択肢が殆どなくなる場合が多い。彼の場合ボールコントロールはもちろんのこと、姿勢が高く周りが見えているから、一度ドリブルを始めても即座にストップ、ターンを状況に応じて選択することができる。また常にパスの選択肢を頭の半分に残しているため、タイミングを逃すことがない。このようなドリブルはメッシのそれと同じ種類の技術である。
34歳を迎え益々熟練の境地に達しつつあるチェコモーツアルト、度重なるケガを乗り越えモーツアルトがこの世を去った35歳をすぎてもヤングガナーズに経験を与え続けてほしいものだ。

「サンティ・カソルラ」14-15 vsサウサンプトン

Arsenal 1-0 Southampton

 

Arsenal

  • 26 Martinez
  • 21 Chambers
  • 04 Mertesacker
  • 06 Koscielny
  • 18 Monreal
  • 16 Ramsey
  • 20 Flamini
  • 15 Oxlade-Chamberlain (Giroud - 65' )
  • 19 Cazorla
  • 17 Sánchez
  • 23 Welbeck (Podolski - 81' )

Southampton

  • 23 Forster
  • 02 Clyne
  • 06 Fonte
  • 17 Alderweireld Booked
  • 21 Bertrand
  • 08 Davis
  • 12 Wanyama Booked
  • 18 Cork (Yoshida - 29' )
  • 07 Long (Mayuka - 81' )
  • 19 Pellè
  • 11 Tadic (Mané - 62' )

 

 f:id:kokin_chan:20141204210738j:plain

 

 

ここまで8勝、26ポイントを積み上げ3位に付けているサウサンプトンとの上位対決。ここで負けるとクラブを取り巻く雰囲気は一層悪くなっていただろう。

 
今シーズン低調気味のチームの中で今月30歳になるサンティ・カソルラが再び輝きを放っている。
一般にトップ下と呼ばれるポゼッションの選手に求められるプレーはそのチームのプレースタイルや対戦相手によって全く違う。時には速攻の起点になりまた時には前線でタメを作る。もちろん相手ディフェンスを崩す決定的なプレーも求められるだろう。それらの役割をするプレイヤーは多くいるが、この小さなスペイン人ほど的確な判断とタイミングで尚且つ高い精度でそれらをこなせるMFはプレミアリーグには殆どいないと言ってもいいだろう。
速攻なのかゆっくりタメを作るのかサイドに散らすのか、この試合カソルラの判断ミスは全くと言っていいほど無かった。
ウェルベック、サンチェスがダイアゴナルにバイタルへの侵入を狙うプレーが増えがちなため、ワニャマを外に連れ出すことを狙う動きは間違いなく一級品だった。ラムジーやサンチェスにはなかなかできないプレーだ。ここまでサンチェス、チェンバースに続き3番目に出場時間が長いカソルラをボスがなかなか変えようとしないのも仕方が無いだろう。
 
年末年始のハードスケジュールにむけて来週からのターンオーバーが楽しみだ。
 
 
 

「CBの組み立て能力」14-15 WESTBROM

ARSENAL 1-0 West Bromwich Albion

f:id:kokin_chan:20141203175144j:plain

  • ARSENAL

  • 26 Martinez
  • 21 Chambers
  • 04 Mertesacker
  • 06 Koscielny
  • 18 Monreal (Gibbs - 23' )
  • 16 Ramsey
  • 20 Flamini
  • 17 Sánchez
  • 19 Cazorla
  • 23 Welbeck
  • 12 Giroud (Oxlade-Chamberlain - 78' Booked )

   WEST

  • 01 Foster
  • 02 Wisdom
  • 25 Dawson
  • 06 Lescott
  • 15 Pocognoli (Gamboa - 75' Booked )
  • 21 Mulumbu (Anichebe - 65' )
  • 08 Gardner
  • 17 Dorrans Booked
  • 29 Sessegnon (Samaras - 76' )
  • 11 Brunt
  • 18 Berahino

 

2連敗で迎えるウエストブロムとのアウェーマッチ

ある程度組織的な守備ができてショートカウンターを持ってるウエストブロムのようなタイプのチームが下位の中でおそらくアーセナルが最も負けやすいチームといえるだろう。


ラムジーの不調などで中盤のゲームメーカーを欠き攻撃を前線のプレイヤーにほぼ任せきりの今季のアーセナルは、この試合アルテタの負傷欠場もあり殆ど一定してポゼッションをキープすることはできなかった。

ウエストブロムがホームということもあり引いて守ることしなかったためチャンスは訪れたが、ゼロから組み立ててディフェンスを崩したシーンは2回ほどだっただろう。

ウエストブロムは前節チェルシーにカウンター2発であっさりと敗れているが、この試合でも「速い攻め」を意識させるような指示が恐らくベンゲルからでていたのであろうシーンがいくつか目についた。

そしてこの試合最も注目すべきはCBの組み立て能力である。遅攻での中央からの崩しがほぼ望めない今、サイドを崩す得点パターンを作りたい訳だからそのためにはバイタルでラムジーカソルラが前を向いてボールを持つことが必須となる。CBの組み立て能力はその為に非常に大事になってくる。はっきりいって今のCBの組み立てはけして上手くはない。メルテザッカーはセーフティファーストで近くのプレイヤーにボールをわたすが、体の向きが良い(敵に背を向けない)のであまり狙われず目立つことはないが、組み立て能力はほぼ無い。今節復帰したコシェルニーがこのゲームのキープレイヤーだった。供給するパスの質にはムラがあるがDFを引きつけCMFに前を向いて受けさせるようなミドルパスを何本も狙っていた。ウェルベックの得点シーンもコシェルニーからカソルラへのミドルパスが起点となった。

現在アーセナルには本職CBが2人いるがゲームを組み立てる能力に関してはどちらもトップレベルとは言い難い。もしチェンバースをCBとしてコシェルニーと組ませることを考えているのなら、ドビュッシーが離脱してサイドをやらざるをえない状態は非常によくない。

実践を積みさえすればチェンバースはCBとして開花するだろう。

優勝争いに加わるためには冬の移籍市場で1人はトップレベルに近いCBを補強すつ必要があるのは間違いない。